【第9回】青森県教育改革有識者会議実施内容まとめ〜必見! 校長先生にエールを送る〜
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はじめに
校長先生は日々奮闘なさっています。私は、そのことに対してエールを送りたいという思いを強く持っています。その上で、今回は内部からの「変革」を起こしていくために何よりも重要なのは校長先生である、ということをお伝えしていきたいと考えています。
誰もが、人にいわれて行うことは気が乗らないものですし、外から変えられるのは嫌なものです。だからこそ、自分たちが目指すことのために、自分たちで実行に移していくことが大切なのです。そのために、校長先生が教職員とつながり合いながら、どう内側から変革を起こしていくか。今回はそうしたことを考えていきたいと思います。
教育においてもサステナビリティとウェルビーイングが重要
社会においても教育においても、「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」は2大コンセプトです。「シンクグローバリー アクトローカリー」という表現をしますが、現在は世界や地球のことを考えながら、今いる足元から行動を起こしていくことが求められています。学習指導要領でも、「持続可能な社会の創り手の育成」が明示されている通り、変化の担い手となるためのチェンジエージェントを育んでいくことが学校現場における命題なのです。
日本国内には閉塞感が漂い、多くの人が先行きに不安を抱いています。日本社会に根差したウェルビーイングの向上を実現していくことが喫緊の課題です。学校を見ても、「働き方改革」といわれてきてはいますが、精神的疾患で休職に入る先生は年々増えています。様々な状況を鑑みても、まだまだウェルビーイングの実現には程遠いのではないでしょうか。体も、心も、社会的にも、健康な状態で過ごすことは、現在、すべての人に求められていることなのです。
ウェルビーイングを向上させるには、「自己決定」ができるかどうかが大きく関わっています。「自分で決める」ということが、元気や幸せのもとなんです。エージェンシーという言葉を耳にするようになり、その中でも「学習者エージェンシー」はよく使われています。しかし、その前に必要なのは、「教職員のエージェンシー」であり、さらに「校長先生のエージェンシー」ではないでしょうか。
サステナビリティとウェルビーイングを実現するためには
サステナビリティやウェルビーイングを実現するためには、「内発的発展」と「ドミノ倒し」と「校長の自己変容」が鍵を握っています。 内発的発展とは、その地域や場所が持つ歴史、精神性、文化など根付いてるものを資源として活用しながら内側から変革を起こしていく力のことです。学校内で教職員が自分たちで変革を起こしていくような内発的発展は、強く、持続可能な変化につながっていきます。これに対して、外発的発展とは「変えられる」「変わらなければいけない」という外圧によって起こされる変化です。外発的発展は外圧がなくなった時には、元に戻ってしまいます。すなわち、持続可能性がなく、無責任な状態となりかねません。
内発的発展による変化は、キーパーソンとなる人がいて、そこからドミノ倒しのように少しずつ広がっていきます。気がつくと、全体がいい方向に向かっているようなイメージです。現状否定からスタートするのではなく、今を肯定しつつ、より良いものを求めていくという変わり方が内発的発展の特徴でしょう。こうした変化の担い手となるキーパーソンを見つけることが校長先生には求められているのです。
そのためには、校長自身が変わっていくことが重要です。変革を促していく校長先生に必要なことは、対話の姿勢であり、誰かが何かをしようとした時には「いいね」と承認し応援することです。教職員はちょっとしたことでも変えてよいかどうかがすごく不安です。だから、変化を起こそうとした人に対しては、「それはいいね」「すごいね」と認めてリアクションしていくことが欠かせないのです。
そして、「全ての人に対するリスペクト」をしていきましょう。大人だけではなくて子どもに対しても同様です。こうした関係性の中でこそ、対話も生まれやすくなります。
学校現場が変革していくには
「学校が変わらない」「教職員が変わらない」と悩んでいる校長先生はすごく多いのではないでしょうか。私も、校長先生方からそうしたお悩みを打ち明けられることが少なくありません。「前例踏襲」は、今まで通りにやることなので、当然ながら、安心感と自信があります。一方で、「変える」となると、不安感や労力などが頭にチラつくようになるのです。そもそも組織とは、変わりにくいものだという前提があります。しかし、変わらなければ、後退するばかり。周りが変わっている中で自分たちだけが変わらなければ、どんどん後ろに下がっていって取り残されてしまうでしょう。変化への不安感や労力を超えていくために必要なことは、「変わるのが楽しい」「変わるって面白いね」というポジティブさです。
では、どうやったら変わっていくことに対するポジティブさを得られるか。校長先生が、「これはいいらしいからやりましょう」「どこかの学校で成功しているので取り入れましょう」と正しいことを言ってもなかなか組織は動きません。それよりも大切なことは、問いを投げかけることです。「本当にこれでいいのか」「いい学校とはどんな学校だろう」「みんなが幸せになるためにどうすればいいのか」といった問いを投げかけて、 みんなで考えていきながら、答えを出していく。その対話の過程の中で、行動変容は起きていくのです。
「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」(精神科医 ウィリアム・グラッサー)という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、それでも、人は他人を変えようとします。そこにエネルギーを使って、イライラしたりパワハラ的な発言をしたりしてしまう。そのパワーの矛先を、自分と未来を変えていくことにいかにシフトさせていくか。それこそが重要なのです。
「今までと同じことを繰り返しておきながら、異なる結果を期待するのは、きっと頭がどうかしているんでしょう」とは、アインシュタインが言ったとされる言葉です。「改革」と言いながら、これまでと同じような行動を取っている学校をよく見かけます。「異なる結果」を期待するならば、全く違う発想で、全く違うアプローチをしていかなければいけません。
その「違うアプローチ」の切り口として、私は「脱・後回し習慣」を掲げています。例えば、指導案作りが大変で旅行に行きたいのに行けない時には、ワーケーションをして作成してみてはいかがでしょう。そうした仕組みをどんどん学校にも取り入れていきたいですね。他にも、「頑張り続けていればいつかウェルビーイングな職場になる」と信じていたけれど、全く叶わないのであれば、これまでとは違う働き方を考えてみてはいかがでしょうか。発想の転換をしていかない限り、結果は変わりません。まずは、「脱・◯◯」として、何から脱するかをそれぞれの先生方で考える。それが変化の第一歩です。
「世界を変えたいなら、まずは自分が変わりなさい」とガンジーは言っています。自己変容こそが、変化の原動力です。変容したあなたを見た他者は「自分も変わろう」という感情を抱いていきます。そして、一人一人の変容が積み重なり組織が変わり、社会変容にまでつながっていくのです。こういう変わり方こそが、持続可能な変化ではないかと私は思っています。その反対に位置する、同調圧力や忖度は結果的に誰の幸せにもならないんですよね。
自分がどうやって変化の原動力になっていくか。このことを、校長先生にはぜひ考えていただきたいです。校長先生自身ですべてを行う必要はありません。むしろ、周りの人たちが変わっていき、自分たちで実行していくことが望ましいでしょう。
カラフルで持続可能な学校作りのために
私が校長をつとめる湘南学園は、創立90周年の教職員と保護者が合同経営をしているユニークな学校です。創立当時の保護者が玉川学園創立者の小原國芳を初代園長に招き、教職員を雇ったところからスタートしました。それから90年間、保護者と教職員が理事となり経営し、お子さんの卒業と共に保護者も理事を卒業するという仕組みを続けています。ちなみに、日本のPTAの発祥だといわれている学校なんです。そんな湘南学園は、「個性豊か」が建学の精神で、色々な花を咲かせることをとても大事にしています。校長の私自身も、カラフルな学校としていくために大切にしていることがあるので紹介していきます。
校長先生は外に出て変化をする
突然ですが、私は「変態」です。どういう意味かというと、サナギからチョウに変わるように、どんどん変化をしていくという意味です。校長先生には外に出て、激しい社会変化の中でさまざまな人と触れ合ってほしいと思っています。出会う人を教育関係者に限定する必要はありません。色々な職種の人と関わるために、引きこもらないで、とにかく外に出ること。そして、人と関わりながら自分をバージョンアップして、それを学校の中に持ち帰っていく。その循環が大切です。
また、「異端」も大事。人と同じである必要は全くありません。自分も人と違うし、周りの人もみんな様々異なっているのだと思えていると、それぞれの違いを受け入れられるようになります。
そして、「機嫌よく」過ごすということはすごく重要です。校長先生が機嫌がよいことは学校に大きな影響を与えます。
リーダーである校長先生がバージョンアップしていくと、教職員も変わっていきます。リーダーの役割は、育つ環境を作っていくということです。「人材育成」という言葉が使われますが、「誰かを育てよう」なんておこがましい。メンバーの成長に、リーダーが学んでいくことの方がずっと多いのです。
リーダーが変わっていくためには、脳の大好物である、「挑戦」と「好奇心」を忘れないことです。「やってみたい」「知りたい」という思いを常に持ち続けてください。それを大事にしているからこそ、私は65歳の伸び盛りなんです。
校長先生、幸せですか?
「校長先生、幸せですか?」と問われたら、どう答えるでしょうか。人によって幸せを感じるポイントは違うと思います。例えば、「青森県のねぶたを愛しすぎてしまった東京都の校長先生」がいます。2022年の「ミスター跳人コンテスト」でグランプリになったそうです。この校長先生に「何に幸せを感じますか?」と尋ねたら、「誰かを笑顔にすることです」とおっしゃっていました。皆さんにも通じることなのではないかと思いましたし、自分の幸せを見つけていく大切さを実感しました。
幸せについて、もう一つ私が考えていることがあります。それは、「その人にしかできないこと」を追究していくことは幸せにつながるのではないかということです。もう少し広げて考えると、自分の学校でしかできないこともあるかもしれませんし、青森県にしかできないこともあるかもしれません。そうした自分たちが持った個性を大事にしていくことと、幸せはつながっているのではないでしょうか。
川崎市の子どもの権利条例では、条例策定に携わった子ども委員から、「まず、おとなが幸せでいてください。おとなが幸せじゃないのに子どもだけ幸せにはなれません」というメッセージが寄せられました。考えてみれば、当然のことですよね。大人が幸せでなければ、機嫌が悪くなり、子どもたちは不利益を被ります。子どもに対する暴力や暴言に至る危険性もあるでよう。では、学校で子どものそばにいる先生方、現在、幸せでしょうか? 子ども一人ひとりが幸せな人生を歩んでいくために、学校教育がどれだけ貢献できているでしょうか? 我々は考え続けていく必要があると思います。
湘南学園の実践
湘南学園は幼稚園から高校まである総合学園です。幼稚園では、自分たちで遊びを考えるなど、子どもたちの選択や判断に委ねられています。今しかできないことを、全力でできる環境を整えているのです。子ども自身に決めさせる過程を丁寧に踏んで、指示や命令は全くありません。この幼稚園での子どもたちの姿からは、教育の原点を見るような感覚を抱きます。
では、小学校以降になっても子どもを信じて任せることができているでしょうか。小学校、中学校、高校と上がっていく中で、だんだんと子ども自身が選択や判断をする機会が減っていくのではないかと思います。そのため、高校の教員が幼稚園に見学に行くと、「自分たちが行っていることは教育の本質と照らして、どうなのだろう……」と自問自答をするようになります。他にも、幼稚園から高校の教員が一同に集まって対話をするワークショップを実施しています。こうした環境から気づくことはたくさんあると思います。
答えはない。あるのは「問い」
「カラフルな学校にしていくためにどうしたらいいですか」と尋ねられることがあるのですが、答えはないんです。問いがあるだけです。
「いい学校とはどんな学校か」「どんな学校作りをしたいか」「それを実現すると、どんな子どもが育つか」。そして、その学校づくりを実現するために、「何をやめて、何を続けて、何を新たに始めるか」。こうした問いを持つことが大切です。学校について考えてもらうためには、先生方と「教員として大切なことは何か」「幸せとは何か」といった背景に迫る問いで対話していくことも必要です。また、校長先生は「どのような教職員に育ってほしいか」という問いを持つことが欠かせません。その問いに基づいて、教職員にきっかけを与え、行動してもらい、反応することによって、学校作りは実現していくのです。
現在、色々な問題があるとしたら、その問題はこれまでの選択の結果です。逆にいうと、これからどうなっていくかは、今の選択によっていくらでも変えられます。いい未来を作っていくことは、今の選択次第でいかようにも実現できるということです。だから、「こんな学校を作りたい」という思いがあるならば、それに向かっていく選択をすればいい。「どうしたらそんな学校ができるか」ということにフォーカスを当てていくことが必要です。
私が心がけてきたこと
私がこれまで心がけてきたことは、聴く8割・話す2割で信頼関係を築くことです。校長になりたての時は、「話せばわかる」「話せば伝わる」と思っていましたが、そうではなく「聞くことの大切さ」を感じるようになっていきました。傾聴することによって、先生たちがどんどん自分たちで動くようになっていったからです。そして、相手を主語にする。関心を持って、よく知ること。仕事を任せるていくためには、よく知らないといけません。また、アドバイスは相手の時間を奪う行為なので、問われなければしません。逆に、フィードバックはしっかりします。そして、校長である私は、怠け者に徹する(笑)。任せたら、手だし、口出し、顔出しは控えます。
さらに、いつも笑顔でご機嫌のよさを伝染させることを大事にしています。暇そうにして、相談がきたら100%応える。相談にくるという時は、「今しかない」状態なわけですからね。また、「こんなことをしたい」と言われた時にはノーとはいいません。否定した瞬間にモチベーションが下がってしまいます。最終形態は教職員が自分で意志決定して行動し、「必要とされない校長」になっていくということです。
校長として一人ひとりの声に耳を傾けること。これは絶対に外せないポイントです。全員が生き生きしているか、輝いているかを常に見ていくことを大事にしてきました。
私は対話の中で、聞き手になり、話し手の中で気づきが生まれることを目指しています。人は質問をされると、それに対して言語化して話をしようとします。そして、話している言葉は自分にも再インプットされます。そうすると、自分の中で気づきが生まれていきます。「答えは自分の中にあるのだということを、その人に気付いてもらうこと」が大切なんです。だから、答えを教えたりアドバイスをしたりすることは、その人が考えるチャンスを奪ってしまうことともいえるのです。聞く側は最後まできちんと聞ききる必要があります。もし下手に私がアドバイスをすれば、「校長先生が言った通りにやったのにうまくいかなかった」「校長先生のせいだ」と他責になり、教員の成長にも現状の改善にもつながりません。つまり、人のせいにするようなことが常態化しているのだとしたら、そのようなことを招く関わり方をしている校長先生のせいともいえるのです。これは子どもに対しても同じことがいえます。
行動を起こしてもらうには時間がかかります。校長先生は粘り強くそれを応援していく役割です。一度ハードルをこえれば、ドミノ倒しのように、どんどん自分たちでやっていくチェンジエージェントを持った職員に変わっていきます。
校長先生、機嫌が悪い時はありますか?
ゲーテが「人間最大の罪は不機嫌である」と言っています。私は校長先生に、「機嫌が悪いのも犯罪ですよ」と伝えています。実際に、”フキハラ”と呼ばれる「不機嫌ハラスメント」という言葉もあるくらいです。
不機嫌は伝染するからタチが悪いんです。校長先生の機嫌が悪いと、教頭先生にうつるかもしれません。教頭先生の機嫌が悪いと職員に伝染します。先生たちが教室で機嫌が悪いと、子どもたちに当たるかもしれません。そうなれば、子どもたちの機嫌が悪くなり自宅で荒れて、それが学校への苦情につながるといったことは大いにありえます。不機嫌の連鎖のようなものが生まれてしまうのです。
校長先生は機嫌のよさを感染させていかなければいけません。いくら立派なことを言っても、機嫌が悪い人の側には人は寄りたくないですし、話も聞きたくありません。
では、機嫌よくいるためにはどうしたらいいか。それは自分の機嫌を自分で取るということです。これはディープスキルの一つです。常に機嫌よくいるために大切なことは、自分を知る「モニタリング」を行うことです。
校長先生の仕事はみんなが笑顔になれる学校を作っていくことです。そのためには、何よりも校長先生が幸せである必要があります。校長先生はみんなを幸せにするハッピークリエイターなのです。
委員による意見交換(敬称略)
■校長先生がつながり合う場を
校長先生は色々な人と対話をしながら、資質やスキルを育む環境はあるのでしょうか。孤独な状態にあるのではないかという気がしています。現状、学校内外でつながり合うような場は設けられていますか。(産業能率大学経営学部教授 藤岡慎二)
校内では、校長先生は最高責任者なのでその後ろには誰もいないというイメージがあります。そうすると、孤独に感じますよね。ですが、校長先生の前には教職員がいて、子どもがいて、保護者がいて、地域の人がいるんです。全くひとりではない。ヒエラルキーをなくして、フラットに話し合っていけば、決して孤独ではないんです。まずは見方を変えていくことで、つながり合うことができるでしょう。
続いて学校外でいうと、校長先生には校長会という場があります。しかし、その校長会がそもそも機能していないから、現在のような状況が起こっています。校長会は、権威主義的で、決められたことを決められたように行っていくだけの集いになってしまっていることが多いように思います。もっと校長先生が悩んでいることや課題、校長としてのあり方を、お互いにざっくばらんに本音で話し合えるような校長会にしていけるとよいのではないかと思います。そもそも校長先生にはフィードバックをもらう機会がありません。その結果、独りよがりになったり、すごく不安を感じたりする方が出てきます。校長会をフラットな会にして、校長先生同士で耳の痛い話をし合えるかどうかが重要なポイントであると思います。校長会を、対話をしながら、自分たちで問いを立てて解を見つけていくような機会に変えていくのです。校長先生自身が自分のことを知るセルフマネジメントの時間にしていけるといいですね。少しずつ教員研修もアウトプットメインのものに変わってきているので、校長向けにもそうした場を作っていけるとよいでしょう。先進的に取り組みを進めている青森県では、ぜひそうした校長会へと舵を切ることにトライしてほしいです。(湘南学園学園長 住田昌治)
教員同士でつながり合って学べるコミュニティも重要だと考えています。その観点から、住田先生がなさっている「みらい塾」についてお話を聞きたいと思いました。(議長 大谷真樹)
NPO法人共育の森が主催しており、セルフマネジメントやリーダーシップ、ファシリテーションなどを学べる場であり、なおかつ、先生方が悩みをシェアする相談の場でもあります。校長先生・教頭先生・指導主事・主幹教諭などがいらっしゃっています。月に3回程で、現在3期目。先生方が安心して話をできる寄り合いのような集いですね。
ぶっちゃけた相談ができたり愚痴が言えたりするようなつながりが必要ではないか、と前々から思っていました。ぜひ青森版も検討していけるとよいのではないでしょうか。(議長 大谷真樹)
これまで校長マインドを育てていく研修はなされてきませんでした。その点は、今後すごく必要になってくると思っています。校長先生が何から何までできるようになる必要はありません。では、何ができなければいけないかというと、学校内で対話を起こせるような組織作りをすることです。校長が対話をさせるということではなくて、教職員が自律的にそれをできるようになることが重要です。そういうきっかけ作り、環境作りをきちんとできる校長先生の力を養っていくことが求められていると思います。(湘南学園学園長 住田昌治)
■教育委員会との関係性
全国の管理職の先生から、教育委員会との関係性に困っているという話をよく聞きます。「やりなさい」と言われたら、必ずイエスといわなければいけないと思っているようなところもあり、自分の思ったような経営ができないと悩んでいらっしゃるのです。教育委員会とはどのような関係性であるといいのでしょう。(副議長 森万喜子)
自治体によって関係性はかなり異なると思います。青森県の状況はわかりませんが、全国的な視点でいえば、良好な関係性であるケースもあれば、学校に行って校長先生を叱り飛ばしているという話を耳にする自治体もあります。そうした状況を見て、教頭先生が「絶対に校長先生になりたくないと思った」と言っているのを聞いたこともあります。
改めて、教育委員会とはどういう存在であるとよいのか、考えてみる必要がありますよね。みんなが幸せになることを目指しているわけですから、本当の意味で幸せになるアプローチをしていく必要があります。それは、つまり学校をきちんと応援して、サポートして、教職員が働きやすいようにするということではないでしょうか。その上で、「先生たちのチャレンジをどんどん応援する」「自治体の教育の質を上げていく」といった取り組みを具体化していける教育委員会が求められています。
青森県のように、先進的に改革を進めていこうという自治体から、「校長先生の悩みはなんなのか」「今困っていることはどんなことなのか」に真摯に向き合い、校長先生たちの学校づくりを応援する教育委員会を築いていくことが大切なのではないでしょうか。(湘南学園学園長 住田昌治)
「学校を良くしよう」と考えて、校長先生が教員への監視を強化するという話をよく耳にします。同じパターンとして、自治体単位では教育委員会が校長先生を監視しようとするようなことが起こっている。住田先生も私も感じていることは、改善が必要な状況の学校で、さらに監視の目を強められれば、どんどん先生方のモチベーションが下がっていくということです。大切なのは監視や管理ではないんです。必要なのは、「あとの全責任は僕が取りますから」と言って、補習を全部やめるなどで教員の時間を作り、「フルパワーで自分のしたかった授業をしてください」と伝えることです。そうすると、先生方が元気になって、生徒も元気になって、3年経つと学校が良くなっていくんです。僕らはそれが経験則でわかっています。
だから、教育委員会や議会は覚悟を決めて、校長先生に好きにやらせてあげて、応援してほしいです。
さらに、学校の経営を手伝ってくれるようになったら、一気に学校はよくなるのではないかと思います。みんなで学校を応援するという環境を作っていかない限りは、校長になりたいという人は増えていきません。
(武蔵野大学附属千代田高等学院、武蔵野大学中学校・高等学校の中高学園長、千代田国際中学校校長 日野田直彦)
校長先生がご自身で変革していける場合と、教育委員会が支援に入っていくことが必要なケースがあると思います。その際の教育委員会の役割は、管理や叱責ではなく、目的に対して学校が困っているような点をサポートしていく関わり方だと思います。いわば、カスタマーサクセスのために一緒に何ができるかを考えること。基本的にはサーバント型な関わり方になるでしょう。そういった支援があれば、現状うまくいっていない学校も少しずつ動き出すことにつながっていくのではないでしょうか。(ライフイズテック取締役、最高AI教育責任者(CEAIO) 讃井廉智)
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Written by 佐藤智