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【第1回】青森県教育改革有識者会議実施内容まとめ

2023年8月22日に第1回青森県教育改革有識者会議が開催されました。本記事では、会議の実施内容をお届けします。

【第1回会議アジェンダ】
1 開 会
2 知事挨拶
3 委嘱状交付
4 議事
(1)委員自己紹介
(2)今後のスケジュール等
(3)意見交換
5 閉会

知事挨拶

開会後、宮下宗一郎知事からの挨拶がなされました。「青森県の教育を一から考えていきたい」という抱負と、青森県教育改革有識者会議への期待が語られました。

特に大きな期待を寄せていることとして、下記5点が挙がりました。
・教員の働き方改革
・学力の向上と小中高の授業のあり方
・高校入試制度のあり方
・人口減少化における高校のあり方(再編を含む)
・部活動などの学校と地域との連携のあり方

青森県教育改革有識者会議の進め方

【運営】
・会議はオンライン開催を基本とし、議論の内容は、教職員・保護者をはじめ県民へ幅広く発信する
・提言のとりまとめは常任委員を中心とし、特別委員はテーマに応じた事例紹介や論点示唆などを行う。
・今後、改革会議からの情報発信を行うオウンドメディアを作成。このメディアでは、主に特別委員の協力を得て、教育改革に関する全国の先進事例を、教職員・保護者等の県民へ積極的に発信

【会議のアウトプット】
・本会議の提言を踏まえて、知事は、教育大綱「あおもり未来教育ビジョン Ver.1.0」 (仮称)を策定。策定に当たっては、総合教育会議を通じて教育委員会と協議・調整する。
・ビジョンは、次年度以降の本会議での議論内容などを踏まえて、逐次アップデートを予定。
・PDCA推進の観点から、次年度以降は、教育委員会の取組や進捗等を本会議にフィードバックし、より効果的な政策に繋げるサイクルを確立。

本年度議論する論点案(仮)

1.学校の働き方改革、教職員のWell-Being向上<教職員の余白づくり>

① 教員が担う必要ない業務の分別・アウトソース
スクールサポートスタッフ、ICT支援員、部活動指導員の拡充
校務支援システムの小中学校含む県内全学校整備、校務事務の支援拠点検討(例:TEPRO)
部活動改革、地域の人も学校を支えるコミュニティースクール
② 教員のスキルアップ支援、魅力化
若手教員塾、ミドルリーダー研修の促進

有識者のコメント抜粋(敬称略)

「これまでの学校はすべて取り組みがプラスされてきました。その結果、過積載の状態になっています。『今の時代にこれは不要なのではないか』『プライオリティが低いのではないか』といった仕分けをしていく必要があると考えています」(副議長・森万喜子)

「教員がやらないことをリストアップしつつ、それをどう社会実装していくか仕掛けづくりをしていくことが重要。今までやってきたことを『捨てる』ことに対して人間は心理的ハードルがあるものです。なくして大丈夫なのだろうか?という心理的障壁とは何なのかを対話し、壁を特定して、取り除いていくような文化づくりまで必要だと考えています」(藤岡慎二 産業能率大学経営学部教授)

2.教育DX、学びのアップデート <子どもたちの学びの環境づくり>

① 自ら未来を切り拓ける探究学習・STEAM教育】
端末活用促進、英語・STEAM分野等でのアプリ導入、探究学習に適した環境確保(学校図書館)
SSH、国際交流、高大接続、一貫教育実践のパイロット校、職業系高校のアップデート
② 個別最適で誰一人取り残さない、あらゆる子どもたちの学びの場づくり
教育データを活用した個別最適化、特別支援教育、校内フリースクール・不登校特例校、遠隔教育

有識者のコメント抜粋(敬称略)

「全国学力学習状況調査の質問紙調査においてICTの活用状況を尋ねていますが、青森、秋田、岩手は平均よりも下回っている結果となっています。『とりあえず使ってみる』ということはできているのですが、『新しい学びの中で求められる活用』となると全国との差が大きくなっています。現在地を確認するという意味でこうしたデータの活用も重要ですね」(平井聡一郎 未来教育デザイン代表社員)

DXをするのは目的ではなく、手段です。学力向上の手段としてDXがあるので、そもそも青森県で学力をどう定義するのかが重要でしょう。ペーパーテストでスコアを取るという旧来型の学力観でよいのか、それが本当に世界で活躍する力につながるのかを確認していくことが必要です。海外進学も一般化し、チャンスが広がっている時代ですよね」(日野田直彦 武蔵野大学附属千代田高等学院、武蔵野大学中学校・高等学校)

誰一人取り残さない教育という点でいうと、不登校の子どもたちは学校で十分に学ぶことができないでいます。これからは、いろいろな選択肢を子どもたちの側に与えていくことが求められると思います。私は長年フリースクールに携わってきましたが、ここで得た経験を学校の中へ活かしていくことができるのではないかと考えています。民間と行政の壁を超えてつながっていくことが必要だと感じています」(江川和弥 フリースクール全国ネットワーク代表理事)

3.学校の経営力強化 <教育改革の出発点>

① センターピンは、学校の経営者たる「校長先生」
校長裁量の幅広さの可視化、積極的な権限委譲
教育庁や外部識者による、学校経営者(校長)に対する伴走型支援、校長裁量経費の確保
教育委員会による、校長採用・登用方針の検討・提示

有識者のコメント抜粋(敬称略)

「教員のキャリア形成といったときに、これまでは65歳くらいまでを見渡した体系だったステップはありませんでした。校長になっていきなりマネジメントとリーダーシップが求められるのですが、それを学ぶ機会がない。経験則や前校長の取り組みの踏襲で進んでいってしまうようなことが多分にありました。一方で、これらはビジネスの現場においては研究が進んでいる領域です。そこから学ぶことも多いにあるのではないでしょうか。また、孤軍奮闘している校長先生の伴走者・相談者となる存在の重要性も感じています」(副議長・森万喜子)

「教職大学院では、ミドルリーダーの養成の重要性を鑑みて青森県教育委員会から小中高、特別支援学校の現場の先生方を派遣してもらっています。ミドルエイジが少ないといういびつな教員の年齢構成を考えると、今手を打たないとまずいと考えています」(三戸延聖 弘前大学教育学部教職実践専攻・教職大学院教授)

全体を通して、青森県教育改革有識者会議について、顧問の合田哲雄氏(文化庁次長、元文科省初等中等教育局教育課程課⻑・財務課⻑)から下記のコメントをいただきました。

「働き方改革や教育DXなど各論の議論の中では具体的な課題解決策がたくさん出てくると思いますが、構造的な改革にはなりにくいのではないでしょうか。青森県が目指そうとしている最上位の目標は何なのか、まずはここをしっかりと議論していく必要があると考えています。

また、教育の難しい点は権限が分かれていることです。文科省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、学校、教員という構造の中で、誰がどんな権限を持っていて、どこでスタックされているのかを明らかにする。『目指す教育』をピン留めした上で、権限構造のどこに働きかけるべきかを検討するのです。
さらに、リソースの配分という視点で横串を指していくことで、具体的な行動が見えてくるのではないでしょうか」

これらの議論は、今後の会議の議論の呼び水、あるいはトピックとして活用されます。
なお、第1回青森県教育改革有識者会議の議論はすべて下記の動画からご覧いただけます!

【会議の概要についてはこちら】

Written by 教育ライター佐藤智