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【県外見学レポート】ろりぽっぷ学園ろりぽっぷ小学校、東京都立立川国際中等教育学校・附属小学校

青森県教育改革有識者会議では、今年度の提言に向けた議論の検討材料のために県内外を問わず、多様な学校の見学とヒアリング、意見交換による調査を行っています。本記事では、宮城県仙台市に位置する私学の「ろりぽっぷ学園ろりぽっぷ小学校」と「東京都立立川国際中等教育学校・附属小学校」訪問のレポートをお届けします

ろりぽっぷ学園ろりぽっぷ小学校

令和5年4月に、宮城県仙台市で保育園やこども園などを運営する学校法人ろりぽっぷ学園が同市にろりぽっぷ小学校を開校。旧坪沼小学校跡地に、学びの多様化学校として誕生しました。児童・保護者・地域・職員などろりぽっぷ小学校に関わる全ての人が、「明日また行きたくなる学校」をコンセプトにして関わっています。現在、28名の児童が在籍。ろりぽっぷ学園に入学するために県外から移住してきたご家族もいらっしゃるそうです。

保育園やこども園を運営する中で、卒園児が学校に行けなくなっているという保護者の声がいくつも届いていたと、校長の髙橋元気先生は言います。「これだけの子どもが苦しんでいるならば早く動かなければ」という思いで、新たな選択肢のひとつとして小学校を開校させました。

ろりぽっぷ小学校に入学する多くが公立の学びに合わなかった子です。長く不登校だった子もいますが、ろりぽっぷ小学校に入学後は、8割~9割の出席率となっていると言います。「もちろん学校に通うことだけがゴールではないが、子どもたちは安心して学ぶ場さえあれば、学校に来ることが楽しみになるのだと感じている」と髙橋校長先生は語ります。
保護者からは、「長期休みに入ると、子どもが学校に行きたいと言うようになった。心の底からほっとした」といった声が届いています。

当校が目指す学びにはイエナプランがマッチするだろうと考え、教育課程はろりぽっぷ学園が行ってきた「幼児教育〜体験活動から学びへ〜」とイエナプランを組み合わせて作成されています。

イエナプランの考え方を活用したろりぽっぷ小学校の学び
ファミリーグループ…3学年縦割りの異年齢グループでつくる(マルチエイジの学級編成)。
学びの多様化学校の子どもの力はさまざま。なかには、学校にほとんど行けておらず3年生であっても1年生の段階の学習の子もいる。多学年で学ぶことで自己肯定感を下げずに学習に向かっていくことができる。
ワールドオリエンテーション…答えではなく、問いを探究する。
子どもたちの好奇心をもとに身の回りにあるさまざまな問いに向き合う。
ブロックアワー…問いを探究するために必要な知識を自分のペースで取り入れていく。
サークル対話…グループ全体の信頼関係を築く。
「なにができたら大人なの?」「質と量どちらが大事?」「夏と冬どちらが好き?」などのテーマに対して意見を出し合いながら自分の考えを深める対話に時間。

イエナプランの考え方に加えて、子どもたちのコミュニケーション能力の向上などを図ることを目的として、学校設定科目「人間キャリア科」を設けています。心理教育やカウンセリングスキルなども活用し、自分の気持ちの扱い方や他者とのつながり方を学んでいきます。

スクールカウンセラーが常駐し、常にサポートできる体制を整えていることも特徴の一つです。また、地域の方々の支援により、体験的に学ぶ機会も多く用意されています。

学校と保護者が密に関われるような仕組みとして、「Storypark」というツールを活用し、子どもたちの様子を保護者に随時配信。さらに、その履歴を子どもごとにファイルでまとめて、成長を感じられるように支援をしています。校内には「保護者ルーム」も設け、保護者が気軽に学校に立ち寄りやすい雰囲気づくりに配慮しています。

現在は中学生が通えるフリースクールを校舎内に併設。イベント等を通じ、小学生、中学生の交流も生まれているそうです。

【教室】畳スペースや個室ブースも用意されている
【教室】子どもたちはサークルになって対話する
【時間割】「ブロックアワー」などにおいては、子どもたちが自分のマグネットを該当箇所に置き、自分が何に取り組んでいるのかを示す
【校舎】校舎内の随所で子どもたちが「自分の学校」として飾り付けをしている
【保護者ルーム】子どもの送迎などで訪れた保護者がリラックスできる部屋を用意している
【図書室】寝転がって本が読めたりぬいぐるみがあったりと、子どもたちの安らぎのスペースになっている

ふりかえり
・地方部に行けば行くほど複式学級で学んでいるケースが多い。その環境を活かして、イエナプランのような学年の枠を超えて個々の学習ペースに合わせた”子ども真ん中の学び”を実現することができるのではないか
・「イエナプランを導入すればいい」という単純なことではなく、あくまでコンセプトであるという理解が重要。地域事情や人員によって教育活動は異なるが、軸となるコンセプトがぶれない学校のあり方が大事
・不登校の子どもたちの居場所をどうつくっていくか。つくり方を学ぶ機会にもなった

東京都立立川国際中等教育学校・附属小学校

平成20年に開校した東京都立立川国際中等教育学校と、令和4年に誕生した附属小学校を訪問しました。教育課程特例校として、生徒が卒業する12年後には「高い言語能力や論理的思考力、深く探究する力を身に付け、多様な人々と協働する人になるとともに、身に付けた資質・能力を活用し、国際社会の平和と発展に寄与しようと、様々な分野へ踏み出す人」の育成を目指します。「カリキュラムの実験校という位置付けで東京都が設立しました」と副校長の長田裕之先生は語ります。

小学校1年生から「英語科」を置き、週4時間の授業を実施。東京都教育委員会が当校用に作成したテキストなどの教材を使用しています。また、小学校6年生では海外の姉妹校訪問がなされるため、それに向けて5年生では英語で生活する体験、4年生では飛行機に乗って東京都の島に行く島しょ宿泊体験などを設けています。

令和6年度現在は小学校3年生までの在籍となっていますが、今後は小学校完成年度に向けて、中等教育学校に接続する12年間一貫したカリキュラムを具体化していく予定です。小学校、中学校、高校段階がそれぞれ円滑に接続し、発展させるために、教育内容の節目を工夫し、論理的思考を高める。そして、この学校で身につけた資質、能力を発揮して、卒業後も学び続け、より良い世界の構築に貢献する人になってほしいと願っているとのことです。

【校舎】小学生の英語の発表が掲示されている。各班で東京について調べた内容
【校舎】小学生の英語の発表が掲示されている。各都道府県の料理レシピ
【ラーニングコモンズ】オープンなスペース。新聞、雑誌、専門書など蔵書が充実
【ラーニングコモンズ】四角のテーブルは学習用として配置
【ラーニングコモンズ】丸型のテーブルは子どもたちが対話できるように設置
【ラーニングコモンズ】様々な言語の絵本が読めるようになっている

ふりかえり
・小中高が連携して教育を作っていくことは青森県でも求められていること。今後も全国の事例を探索していきたい。
・ラーニングコモンズにおいて、四角いテーブルは学習用、丸いテーブルは対話用とされていて、日頃から対話の文化が根付いていればこういった設備を生かしていくことができる。
・こどもの興味関心を引き、成長する場として、学校図書館をより良いものとし、学びの環境を充実させる視点も大切。