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【明日からはじめる】学校業務改善について考えるヒント集

青森県教育改革有識者会議では、「未来を担う子どもたちにふさわしい教育を提供し、新しい青森県を創造していく」ことを目指し議論が進められています。議論の中では、教育や学校の本質的な見直しを進めつつ、すぐにでも学校ではじめられるようなアイデアも出されてきました。
そこで、今回は委員から学校の業務改善について、お金がかからず、すぐに着手できる、「明日からはじめられる業務改善方法」を募りました。
ぜひ、各校の改善のヒントとしてご活用ください。
※こちらの記事は、第4回会議の副議長・森万喜子からのプレゼンテーションを基に作成しています。

文科省から提示された業務の3分類14項目について

第2回・第3回の議論を振り返り、業務の3分類14項目「教師の業務だが負担軽減が可能な業務(9〜14)」について、委員の方々より、ご自身の経験や事例校の情報から「こんなことできるのではないか」という意見をたくさんいただきました。今回は、お金がない・時間がない状態でも着手できるものがあるのではないかという観点から出された取り組みの一部を紹介したいと思います。各校が自校でアイデアを出す叩き台として使ってもらいたいと考えています。これを、「1つでもいいからやってみようよ」と進んでいくヒントにしてほしいと考えています。

文科省が提示した業務の3分類14項目


▼参考 第2回青森県教育改革有識者会議の内容はこちら▼

▼参考 第3回青森県教育改革有識者会議の内容はこちら▼

授業準備

授業で使うプリントを作り、それを輪転機で印刷して、子どもたちに配布してはいないですか? この時点で時間かかかっています。
また、その配られたプリントを子どもたちはファイリングしたり、糊でノートに貼ったりしていますが、中には整理整頓が苦手な子もいます。その子は机やロッカーの中が大変なことになっていて、それを先生がまた個別に指導するような状況が生まれています。

<こうしてみたらいかがでしょうか?>
・そもそもプリントを減らしてみませんか?
プリントで配っているドリル的な問題などは副教材やデジタル教材を活用してまかなっていく
・ペーパーレス化
補助的なものが必要な場合は、Googleを使用しているのならばClassroomに保管するなどして紙を極力なくす

評価や成績処理

子どもたちの評価や成績処理の負担は大きなものです。成績に加味するために、忘れ物や授業中の手あげのカウントなどしていませんか?

<こうしてみたらいかがでしょうか?>
・忘れものチェック・手あげのカウントをやめる
・ルーブリックを生徒に示して、評価基準や評価材料を明確に
子どもたちにとってもわかりやすい評価基準となり、その結果、問い合わせが減少する効果も
・(導入している自治体においては)校務支援システムの活用
慣れるまで多少時間はかかるが、通知表から指導要録まで一貫してつながっているので業務負担感の減少に効果が期待できる(システムによって使い勝手に差があるようなので精査は必須)
・(導入している自治体においては)学習支援員との連携
システムへの数値入力や小テストの採点などを学習支援員に担ってもらうことで負担軽減

学校行事の準備・運営

行事への負担感は、各校においてかなり大きくなっています。カテゴライズして、複数あって、類似した行事は整理するなどできないかを検討してみてはいかがでしょうか。

<こうしてみたらいかがでしょうか?>
儀式的行事:入学式、卒業式、始業式、終了式 など
練習をしない、時間の短縮などの視点でも精査してく
健康安全・体育的行事:健康診断、避難訓練、運動会(体育大会) など
年に2回避難訓練をしているとしたら、「本当に2回やる必要があるのか?」「毎回、消防署から人を派遣してもらう必要があるのか」などの視点でも考えてみる
文化的行事:学習発表会、文化祭 など
旅行・集団宿泊的行事:修学旅行 宿泊研修 など
勤労生産・奉仕的行事:ボランティア活動、地域のゴミ拾い  など
「総合的な学習の時間」と絡めて実施(時間の効果効率化)ができないか、統合できる行事はないかといった視点で考えてみる

家庭との連携

家庭へ配布するプリントが多く、教員の負担も家庭の負荷も増えています。保護者が、大量にあるプリントのとうち、どれが返事が必要なもので、どれがお金を添えて出すものなのかわからないという事態が生じているのです。結果、教員はその個別対応にも時間を取られています。

<こうしてみたらいかがでしょうか?>
・学校から発する情報をペーパーレスに
無料で使える「学校あんしんメール」などを活用。メールアドレスを登録してもらう作業は必要だが、その後は楽になっていく。
また、これにより緊急連絡網は不要に。一斉にメールが行き渡るようになるので、ペーパーよりも確実に情報が届くようになる
・保護者とは電話以外のコミュニケーションツール(アプリやWeb)へ移行
電話はとても時間を取られるツール。また、口頭でのやり取りは、誤解や聞き間違いも生じやすく、トラブルの原因にもなる  
デジタルの仕組みを導入することにより、朝の欠席連絡電話が殺到しなくなる
・保護者面談のオンライン活用
放課後の時間に面談を入れていることが多いが、保護者からトラブルにより「職場を出るのが遅くなってしまいました」といった連絡が入ることがある。そうなると、教員の時間外勤務につながってしまう可能性も。どこでもオンラインでつないで話すことができる環境にすることで、保護者も教員の負担も軽減させる

そのほかのアイデア

・年間指導計画の余剰時数を大削減
余剰時間を「ゼロ」で提出すると教育委員会から、「学年閉鎖になったらどうするんですか」といった電話かかってくることもある。それを配慮して余剰時間を設けている学校がほとんど。ただ、そこまで多くとる必要はないのでは
・1年間を見通し、繁忙期の授業時数を減らし、校務に携わる時間を確保
例えば、年度はじめや評価のタイミング、進路決定の時期、年度末など、学校の繁忙期はある程度見通せる。その時期には子どもの下校時刻を早めるといったことを検討する
・教科の年間指導計画の見直し(カリキュラムマネジメント)
年間指導計画を作る際に、教科書会社が作った雛形をカスタマイズせずに実行しようとしてパンクしそうになっている先生もいる。教科横断でできることはないか、あるいは重複して削減できるところはないかを確認していくことが重要
・指導案や作成資料などは基本的に「A4サイズ1枚」
資料は量より質が重要だという認識を管理職も含め、みんなで持つことが大切。A4サイズ1枚で収められるようにしていく
・職員室などの不要物を捨てて動線を意識し、働きやすい職員室に
職員室内をスッキリさせることで、動きやすくしておく。探し物もしやすくなる
・生活ノート、手帳などの点検・添削を廃止する
子どもたちが時間管理をできるように手帳などを運用しているのはよいが、担任がチェックをすると、業務増加につながる。また、子どもも本当のことを書かなくなっていく傾向がある。点検・添削は廃止してもよいのでは

「子どものためになっていない」と感じることはどんどんやめる

学校業務改善において大事な考え方とは、「子どものためになっていない」と感じることはどんどんやめていくということです。

例えば、具体的に下記のようなことが挙げられます。
・教育委員会の指導訪問時等、玄関に「歓迎〇〇様」という表示を出したり、湯茶接待などを廃止
教育委員会などを迎える際に、教頭が「歓迎〇〇様」といった管理札を出していたが廃止。廃止前には、教育委員会に校長から手紙を出して、「個人情報の保護の観点も鑑みて廃止します。その代わり、約束の時間には玄関に迎えに伺います」と伝えた
・行事終了後、列席した来賓へ礼状を出すのを廃止
行事が終わった後は、来賓に対して対面でお礼は伝えている。それに加えて来賓へ令状を出していたが廃止。「廃止にします」という通知を事前に行った
・学校運営協議会役員等への「学校だより」や文書配布はメールで
学校運営協議会やPTA 会長などに「学校だより」を配っていたが、メールにした
・部活動ガイドラインの遵守
子どもの健康と自律的に時間を使うために、やりすぎ部活動は厳禁とした。そして、保護者もそれを周知した

おわりに

今回挙げたTIPS 的な業務改善を実行することが、改革の目的ではありません。あくまで改革の目的は、教育の質の向上です。しかし、小さな改善を始めることで突破口が開かれることもある。そんな思いで、今回はお伝えをしました。まずは、「こんなことやってみようか」とフラットに話し合える職場していくことが大事です。

働き方改革での象徴的な話として、「木こりのジレンマ」という逸話があります。
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ある木こりが、熱心に木を切っている。
通りかかった人が、それを眺めていたが、斧が錆びて刃こぼれしていることに気づいた。
「斧の刃を研いだほうがいいよ」
「わかっちゃいるんだけどね。
木を切るのに忙しくて、それどころじゃないんだよ」
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運転免許も取得するのにも時間や労力がかかりますが、いざ取得すると移動のスピードも幅も格段に増します。それと同様に、新たな働き方改善の手段を活用してみることで変わってくることもあるはずです。


【第4回青森県教育改革有識者会議の内容はこちらからご覧いただけます】


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